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システムの耐障害性を評価するカオステストとは?

システムの耐障害性を評価するカオステストとは?

カオステストは、システムの耐障害性を評価し、予期せぬダウンタイムを未然に防ぐための手法です。
Netflixが自社のシステムをAWSへ移行する際に考案したもので、システムの弱点を特定して修正することを目的としています。
Netflixのような動画配信サービスでは、些細なエラーが長時間のサービス中断へと発展することになりかねません。
このリスクを防ぐために、Netflixは「Chaos Monkey(カオスモンキー)」と呼ばれるカオステストツールを開発しました。
カオステストの実施により、システムの堅牢性が向上し、運用中に発生する問題に対して迅速かつ効果的に対応することが可能です。

この記事では、カオステストの仕組みと実践方法、カオステストのメリット・デメリットについて解説します。

カオステスト/エンジニアリングとは?

カオステストは「カオスエンジニアリング」とも呼ばれ、システムの耐障害性を評価して、予期せぬダウンタイムを防ぐための手法です。システムの弱点を見つけ出して、修正することを目的としています。
カオステストでは、システム内で意図的に障害を引き起こし、システムが障害にどのように対応するかを観察して、問題点を発見します。

例えば、システムのサーバーを停止させたり、通信が途切れるような状況を意図的に発生させたりして、システムが実際どのように対応するかを試します。
このテストの結果をもとにシステムの弱点を修正して、より頑強で信頼性の高いシステムを構築します。
カオステストの実施により、システム全体の耐障害性が向上し、本番環境での運用リスクを低減できるでしょう。
なお、カオステストはモニタリングツールを備えたシステムを構築し、本番環境で実施する必要があります。

カオステストは、次の5つの原則で構成されています。

  1. システムが正常に機能していることを確認し、安定状態を定義する
    安定状態とは、システムやサービスが正常に機能しているときの動作・パフォーマンスのことです。
    Webサーバーであれば、応答時間が一定以下であり、エラーレートが一定範囲内に収まっている状態を安定とみなします(エラー率1%未満)。
  2. システムの安定状態が維持されると仮定する
    定義した安定状態が、外部からさまざまな影響を受けても保たれると仮定します。
  3. ユーザーへの影響を最小限に抑える
    カオステストを実施する際は、ユーザーへの影響を最小限に抑える必要があります。
    そして、いつでもインシデント対応を実施できる体制を整えます。
  4. カオステストを実行する
    システムの稼働状態、チームの体制、影響範囲の把握などの準備ができたら、カオステストを開始します。
    サーバーのクラッシュ、ハードウェアの故障、ネットワークの切断など、さまざまな事態を想定して実際の状況をシミュレーションしましょう。
    カオステストは、問題が発生した際にシステムやアプリケーションがどのように対応するかを確認するために実施します。
    そのため、本番と同じ環境で行なうのが理想です。
  5. システムをモニタリングして繰り返しテストする
    カオステストは、定期的に行なうことが重要です。何度もテストを重ねてシステムの弱点を見つけ出し、より強固で信頼性の高いシステムを築きます。

意図的に障害を発生させるChaos Monkey(カオスモンキー)とその仕組み

カオステストを実施する際に使われるツールとして代表的なのが「Chaos Monkey(カオスモンキー)」です。
カオスモンキーは、システムが突発的な障害にどのように対応するかをテストするために、Netflixが開発したツールです。
このツールを使用するとシステム内にデプロイされ、ネットワークの遅延、サーバーインスタンスの障害、データセグメントの欠陥などを意図的に作り出します。

カオステストのメリット

カオステストは、業界最大規模のITチームやDevOpsチームにも採用されつつありますが、メリットだけでなくデメリットもあります。
ここで、メリット・デメリットをそれぞれ紹介するので押さえておきましょう。

カオステストのメリット

  • 通常のテストでは見逃されがちな問題を特定して解決できる
    カオステストを実施することで、開発環境やテスト環境では見逃される潜在的な脆弱性を発見して、迅速に対応できます。
  • 計画外のダウンタイムや障害の発生確率を抑える
    継続的にテストすることで、システムの変更やアップデート導入時の問題を早期に発見できます。
    その結果、システムの可用性・信頼性も向上するでしょう。
  • システムの整合性を強化できる
    障害発生時のシステムの動作を検証し、必要な改善を行なうことでシステム全体が安定して動作します。
  • 大規模で複雑なシステム(クラウドベースのアプリケーションやサービス)をテストできる
    大規模で複雑なシステムはサーバー間の連携や通信を大量に行なうため、予期せぬ障害が発生しやすい傾向にあります。
    カオステストを実施すれば、本番環境でシステムがどのように応答するかをリアルタイムで確認できます。

カオステストがDevOpsと相性の良い理由

テスト結果をもとに、開発スタッフと運用スタッフが協力して改善策を講じることができるため、カオステストはDevOpsとの相性が良いとされています。
これにより、開発の初期段階からシステムの堅牢性が高まり、運用時のトラブルが減少するでしょう。
さらに、DevOps環境でカオステストを実施することで、チーム間の透明性向上にもつながります。

なお、カオステストでは、DevOpsエンジニアやSREがさまざまなテストシナリオの定義、テストの実施、テスト結果の追跡をします。
そのため、DevOpsエンジニアやSREはテストを行なう際に、顧客への影響やリスクを最小限に抑えるよう注意しなければなりません。
カオステストを適切に計画・実施できれば、DevOps環境におけるシステムの強化と改善に大きく貢献するでしょう。

関連記事 : 先進的なDevOpsを実践する6社のケーススタディ

カオステストを始める前に考慮すべきポイント

カオステストはシステムの耐障害性を評価し、予期せぬダウンタイムを未然に防ぐ効果がありますが、すべての環境に適しているわけではありません。
自社システムにカオステストを導入するか検討している場合は、まず現在のシステム構成を確認して、自社やチームに適しているかを見極める必要があります。

例えば、以下のような場合には、カオステストは適していません。

  • 小規模システムまたはデスクトップソフトウェア
  • 企業の業績に大きな影響を与えないアプリケーションやサービス
  • 顧客との契約(SLA)で、 24時間の連続稼働を求められていないアプリケーション環境
  • トラブルが発生しても、同日中に解決されれば障害が許容されるようなシステム

カオステストは、大規模で複雑なシステムの機能向上に効果的です。そのため、小規模のシステムやデスクトップソフトウェアにはあまり適していません。
カオステストを適切な環境で実施すると、インシデント対応の迅速化、予期せぬダウンタイムの抑制、スケーリングの柔軟性など、多くのメリットを得られるでしょう。
カオステストに興味ある方は、「PagerDuty」のプラットフォームを活用することでプロセスをスムーズに進行できます。

PagerDutyは、迅速かつ効率的なインシデント管理をサポートするツールです。カオステスト中に発生する問題に対しても、即座にアラートを検知して対応できます。

PagerDutyに関する資料や導入事例は、以下のページからダウンロードいただけます。
https://www.pagerduty.co.jp/resources/

まとめ:カオステストを実施してシステムの耐障害性を改善しよう

カオステストは、普段使用しているシステムやサービスの予期しないトラブルにもしっかりと対応できるか、確かめるための方法です。
現在、NetflixやAmazonなど、さまざまな企業がこの手法を取り入れており、PagerDutyも例外ではありません。

PagerDutyでは「ChaosCat」と呼ばれる自動フォルトインジェクタを導入し、システムの耐障害性を定期的にテストしています。その結果、システムがさまざまな障害に対して、どのように対応するかをモニタリングして修正します。
カオステストを活用し、予期せぬ障害が発生しても安定して稼働し続ける強靭なシステムを構築しましょう。

PagerDutyでは、カオステストを通じてシステムの耐障害性を高め、サービスの信頼性を向上させるために積極的な取り組みを行なっています。
興味のある方は、オンラインでお問い合わせいただくか、14日間の無料トライアルをお試しください。

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